聖護院大根
一般的に流通してる大根と違い、大きくて丸々とした、とてもインパクトのある見た目の聖護院大根。甘みが強めで水分量が多く、ギュッと身が詰まっているため、煮込んでも崩れにくいのが特徴です。京都の冬の食卓では、おでんや煮物などの定番野菜のひとつととなっています。
初めて見て、その丸さに目を丸くする人も少なくない、とても個性的な姿かたちの大根。もちろん、「ビジュアル派」だけでなく食べればおいしい「実力派」の野菜でもあります。
歴史
来歴について、京都市のホームページから引用します。
文政年間(1816~1830)に現在の左京区聖護院に住む農家が,尾張の国から黒谷の金戒光明寺に奉納された大根を譲り受け,栽培し,採種を重ねるうちに短系のものが生れ,それが土壌の浅い京都の地に合ったので,聖護院一帯に栽培が広がったといわれています。
来歴については,別の農家が取り寄せたという説もありますが,いずれにしても尾張の宮重大根という長大根が原種であるといわれています。
京都市のホームページ
産地は鞍馬口から嵯峨の方へと広まりましたが、現在はここ久御山町、淀が主な栽培地となっています。冬のみに出荷する季節野菜で、九条ネギ同様、「京の伝統野菜」のひとつです。「丸大根」「淀大根」「尾張大根」などとも呼ばれます。
「京の伝統野菜」に指定されている大根には、「辛味だいこん」「青味だいこん」「茎だいこん」もあり、古くから大根が京都の食文化に根付いてきたことが分かります。
食べ方
食べ方はやはり、おでんや煮物がおすすめ。煮崩れしにくいので、出汁をたっぷりしみ込んだ煮物が楽しめます。油揚げなどと合わせて煮込む「炊いたん」は、お揚げの油と大根の相性がバツグンの定番メニュー。鶏肉も大根とよく合います。
また、聖護院大根は1月から2月上旬にかけての厳冬期に、特に甘みが増します。大根の部分によって味が違い、根っこの方の下部は辛めで、葉に近い上部は味が甘めです。上部の優しい甘さを味わうなら、サラダにするのもおすすめですよ。
ひとつの大根で、様々な料理に使い分けるのも楽しいもの。
ぜひ一度、お試しを。
京都さんぽ
全国の「お稲荷さん」の総本宮、千本鳥居で有名な伏見稲荷大社の二月初午の大祭で、京野菜の数々が奉納されています。もちろん、聖護院大根と九条ネギの姿も。商売繁盛、家内安全を願ってたくさんの人がお参りに訪れるお祭りです。
また近年、その奇才ぶりで注目を集めている江戸時代の絵師・伊藤若冲は、実は京都市・錦市場の青果店の生まれ。野菜とともに暮らしてきた影響からか、釈迦入滅の涅槃図をモチーフに、野菜を擬人化して描いたユニークな絵を残しています。
その中で、釈迦の役割を演じているのが大根。白くて清々しく、人々の暮らしに深く浸透してきた大根は、その大役を任せるのにピッタリだったのかもしれませんね。